家賃や通信費の按分、ホントはどうなの?税理士に聞いた経費計上の現実

ブログやアフィリエイトで収入を得ると、確定申告が必要になる場合があります。その際、所得にかかった費用を「経費」として計上すれば、利益を圧縮して節税に繋がります。しかし「家賃の面積按分」や「電気代の時間按分」など、調べてみても「本当にこれでいいの?」と確信が持てない方も多いのではないでしょうか。

そこで今回、現役の税理士の方にお会いする機会があったので、副業や個人事業における経費の気になる疑問をとことんぶつけてきました。この記事を読めば、確定申告で慌てないための「経費のリアルな線引き」が分かります。

注意

あくまで一税理士の見解です。

経費として認めるか否かの最終判断は「税務署」にある

まず税理士の方が最初に強調していたのが、「経費として認められるかどうかの最終的な決定権は、税務署にある」という事実です。

税理士がいくら「これは経費で大丈夫でしょう」とお墨付きを与えても、いざ税務調査が入り、厳密な調査官の目で確認されれば「これは経費として認められません」と判断されるケースは決して珍しくないそうです。

だからこそ、まともな税理士であればあるほど「この経費は絶対に大丈夫です」とは断言しないとのこと。「税理士が大丈夫と言っていたのに」と不満を漏らしている人は、そもそも信頼できない税理士に当たってしまったか、あるいは自分の理解の中で都合よく解釈してしまった可能性が高いといえます。

これは税理士の責任逃れというより、変えようのない事実なのです。
税法には明確なルールがある一方で、運用や解釈に幅がある部分も少なくありません。
そのため税理士は、可能な限りリスクを説明し、適切な選択肢を提示することはできますが、「100%大丈夫」と断言することはできないのです。
むしろ「絶対大丈夫」と言い切る税理士がいれば、そのほうが危ういと考えた方が良いでしょう。

経費計上の大原則は「その所得を得るためだけに使ったか」

では、一体何が経費として認められるのでしょうか。その答えは非常にシンプルです。

「その所得を得るため”だけ”に使用したもの」

この「だけ」という部分が最も重要です。この原則を厳密に適用すると、一般的に言われる「家事按分」の多くは認められにくくなります。

スマホの端末や通信費を例にすると

税理士によると、認められやすい順は以下のようになります。

  1. 仕事専用のスマホと回線契約を別途用意する
  2. 1台のスマホに仕事用とプライベート用のSIMを2枚入れて契約を分ける
  3. 1つの契約を、使用時間の割合で按分する(時間按分)

プライベートでも使用するスマホの通信費を「業務で40%使った」と主張しても、その証明は極めて困難です。

家賃の場合は?

家賃の按分(面積按分)は、時間按分よりは認められやすい傾向にあります。なぜなら「この部屋は仕事専用で、プライベートでは一切使用していません」と物理的に区切って説明しやすいからです。

最近では、スマートメーターやIoT機器を使って仕事部屋の電気使用量だけを正確に計測できれば、電気代の一部も経費として認められる可能性が高まるかもしれません。

なぜ「家事按分」という考え方が一般的に語られるのか?

「そんなに厳しいなら、なぜ家賃や通信費の按分が当たり前のように語られているの?」と疑問に思う方もいるでしょう。

その最大の理由は、個人の小規模な所得に対して、そこまで厳密な税務調査が入るケースが稀だからです。指摘される可能性が低いなら、少しでも経費を多く計上して利益を圧縮した方が得、と考える人が多いのも事実です。

しかし、この考え方には大きなリスクが伴います。もし何らかの理由で税務調査の対象となった場合、説明のつかない経費計上は「悪質」と見なされ、ペナルティとして非常に重い「重加算税」が課される可能性があります。

「家事按分」は経費として認められることもあるため、この「悪質」と判断されるのを避けるための説明材料という側面も強いのです。「私は所得を得るためにこの費用が必要だと考え、ルールに則って面積(時間)で按分して申告しました」と主張することで、たとえその経費が否認されたとしても、悪意はなかったと判断されやすくなる、というわけです。

どこまで経費として申告すべきか

では、結局私たちはどうすれば良いのでしょうか。税理士の話を踏まえた上での私の見解は以下の通りです。

  • 経費にしたいものは「所得を得るために必要であること」を金額も合わせ明確に示せるようにしておく。
  • 税務署に認められない場合があることを常に念頭に置く。
  • リスクを避けるため、あまりにギリギリのラインを攻めすぎない。

税理士に依頼するほどの所得規模でなければ、無理に家事按分などをせず、誰が見ても「所得を得るために必要だ」と納得できるものだけを経費として計上するのが最も精神衛生上良いでしょう。

数千円、数万円の節税のために「いつ税務調査が来るか…」と怯えるのは、あまりにも不毛です。まずは事業専用のサーバー代やツール利用料など、明確なものからしっかりと計上していきましょう。

まとめ

今回は、税理士に直接聞いた「確定申告の経費」に関するリアルな話をお届けしました。

  • 経費の最終判断は税務署が行う
  • 大原則は「所得を得るため”だけ”に使った費用」である
  • 家事按分は誰が見ても納得できるものに限定しよう

大切なのは、計上したすべての経費について「これは所得を得るために必要な支出です」と自信を持って説明できることです。グレーな領域に踏み込む前に、まずは白黒ハッキリしている経費を漏れなく計上することから始めましょう。

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